NO.85
書  名 株式罫線の見方使い方
著者/訳者 木佐森吉太郎
発行所 東洋経済新聞社
価  格 1,600円
 
 
 

「株式罫線の見方使い方」からの抜粋


 



(終着点、すなわち天井)

  これ以上表面にあらわれるものは何物もない、いわゆる「材料の出尽し」となってしまったとすれば、その時には相場のほうからいえば、この株式に対する新しい買方をこれ以上増加させる原動力というものは、同時にもはや種切れになってしまったということの証明なのである。だから、この株の未来を思惑するといった魅力はもうなくなってしまった。ここがこの株価の上げどまりである。終着点、すなわち天井である。


(投資のための道案内)

  一本の線の上にいろいろな意味と内容をあらわしている陰陽足を、投資のための道案内として私はおすすめする。陰陽足の日足と週足、これを自分の思惑している、またはこれから思惑しようとする銘柄について書いてみる。
  そして、多少でもひまのある人ならその上にいま二つ、全体の市況をリードする指標株と東証第一部ダウ式平均足、同出来高表、日証金残高表、これらを株式界全体の動きを知るために参考までに書いてみる。これだけあれば、それで十分であると思う。


(罫線はなにを語るか)

  罫線はもはや単なる株価変動図ではない。それは戦闘の表現である。売方と買方による株式売買という激しい抗争の様子を図解した戦闘図である。だから、罫線図にあらわれる、いろいろの変化は売方・買方、つまり強弱の力の均衡のいろいろの変化をあらわしているのだということができる。ちょうど人相というものがその人の性格、人となりというものをなにかしら暗示しているように。すなわち、人相が人格の表現であるように罫線は株価変動の相でもある。


(大上っ放れを買う)

  大上っ放れを買うということは、突如、革命的に変化した高値で株を買うことであるから、その株に対する投資家の評価を一瞬のうちに、180度に切り換えるということが前提になっている。鋭敏な直観力を働かすと同時に、その直観の命ずるまま、間髪を入れず実践するという度胸が必要になってくる。だから、なみなみの投資家では出来ない芸当であって、したがって大上っ放れた値段をもって、大衆的な熱狂買による不当な値段であるときめつけることはできない。商内の実際をみれば、むしろ、控え目な値段であったとさえいえよう。
  それ故に、大保合のあとの大上っ放れは、理屈抜きに断乎としてついていくべし、まさに千載に一遇の好機というべきか。ここを買わずして、いったい、いつ買おうというのだ。


(三角保合)

  嫌気売りにも相場が下げず、しだいに下値を固めていく相場の地合が見直されて、楽観人気が台頭、それとともに、第二の買目標に対する評価もかたまってきて、循環買いの順番がまわり、ふたたび活躍するようになる。普通、このような長保合の型は三角保合といって、底辺に対する頂点のように保合値幅が縮まっていく。43年3月末の大和ハウスの保合上分かれが、この適例である。
  長保合の末、値も大きくくずれず、それで極度に商内が減り、相場も動きが少なくなるといった商情のときは、嵐の前の静けさであると知れ。まさに風雲堂に満つ。戦機熟すだ。


(相場は相場に聞け)

  相場は相場に聞け≠ニいう経験主義の考え方、その上に利乗せという戦法。罫線をひいている人にはこの二つの事柄は当然、必然的に出てくることである。この二つのことと罫線とがしっかり結びつかないようでは、罫線を真に理解して、応用しているということはないと思う。
  古今、東西、大相場師といわれるほどの人はみな、利乗せが強く、ひかれ腰が弱い人である。佐藤のブーチャンにしろ、近藤紡にしろ高値買いあおり、安値売りたたきに名声をもっている。
そして、利が乗ったら最後、目標値がくるまでテコでも売らないばかりか、素人が売りたいところをここを先途とばかり買乗せてくる。素人のほうは相場の動きに逆行した押目買いであり難平買いである。そして利食い腰が弱く、5円も利が乗るとハラハラしてジッとしておられず、すぐ売ってしまう。そのくせ相場で引かれると50円ギリも100円ギリも損して平気でいる。これでは儲からない。
  押目買戻り売りという言葉が素人筋の心理に迎合した悪い言葉で、真理は上にも下にも、相場の波にのった新高値買い、新安値売りである。


(中段保合の戦線整理)

  大きく踏み上げた相場の最初の大幅の下げは、絶対に目をつむって、逆向かいに買って間違いなしである。
  まさに総売り人気のところを、狂人のようになって買いまくるのである。この際、材料などを検討しているのはきわめて馬鹿げた話だ。この際の材料といえば、相場が急反落したために、「なんだ、なんだ」と騒ぎ出し、そこで「地球が爆発するんだって」といえば、「ほんとか、それは大変だ。成行売りだ」といったぐあいなんだから、絶対に耳をかす必要はない。つまり、中段保合の戦線整理を大規模にやったまでのことである。
  そこで、この地震型から示唆される売買の戦法は、中盤戦以降で利の乗った玉は、へたな指値で利食売りせず、地震があるまで、クソ度胸で買い突っぱることだ。ここが男の見せどころと思え。


(長い上げ相場のはての大出来高)

  経験によれば、商内が史上最高の出来高とか、またそれに近い出来高に達すると、数日中に相場が大天井を打つ。出来た当日は天井にならないが、それから二日目か三日目あたりに頭打ちになる例が非常に多い。これは、長い上げ相場の過程で少しずつふえて来た買気が、しだいに安心買いとなり、最後に熱狂的な雰囲気にあおられて一挙に出つくしてしまうためである。だから、その後には買気が急速に減退していくので、安値から買っていた買方が危険を感じて売物を出してくるから相場は崩れ出してしまう。したがって、好悪の材料があるなしにかかわらない。好材料が出れば出るでよけいに絶好の売り場所となるし、悪材料であれば絶望的な売り物殺到という凄惨な場面が現出する。
  長い上げ相場のはてに大出来高ができたとわかれば、その背景をなす材料が何であろうと、そもそも株をもっていること自体が危険という局面になったのだから、翌日の寄付は、持株全部成行き売りだろう。この直観と決断力の有無が投資家としての資格を決定する。この期におよんで、なお迷い、材料をうんぬんするにおいては、いまさら何をかいわんやである。


※ ( )内タイトルは勝手につけました。

 
 
 
鉄 太 郎 の ナ ル ホ ド と 納 得
 


  この本のタイトルは、「株式罫線の見方使い方」であるが、単純なパターン分けによる罫線の解説ではない。罫線に現れる買い手、売り手の心理を解説してくれている。テクニカル分析をするのであれば、ここまで掘り下げなければならないと納得した。