NO.90
書  名 リスク
(神々への反逆)
著者/訳者 ピーター・バーンスタイン/青山 護
発行所 日本経済新聞社
価  格 2,200円
 
 
 

「リスク」からの抜粋


 



(フィボナッチ数列)

  彼は、最初のうさぎの夫婦が生後二ヵ月になるまで子供を生まず、その後は毎月新しいペアのうさぎを生むと仮定した。四ヵ月目には最初に生まれたペアが初めてのペアを生むようになる。このプロセスが始まると、毎月のうさぎのペアの総数は、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144、233となる。各々の数字は、その前の二つの数字を合計したものに等しい。このプロセスが100ヵ月続くと、ペアの総数は354、224、848、179、261、915、075になる。
 フィボナッチ数列はお遊びの域を超えている。フィボナッチ数のどれでもいいから、それを次に大きいフィボナッチ数で割ってみよう。3以降の数値では答は0.625になる。89以降の数値では答は0.618になる。より大きな数値の場合になればなるほど、小数点の数値が等しくなってくる。同じように任意の数値をその前の数値で割ってみよう。2以降の数値では答は1.6になるし、144以降の数値では1.618になる。


(ゼロの導入)

  ゼロは二つの方法で旧来の計算体系に革命を起こした。まず第一は、人間は0から9までの10種類の数字を使うだけで、考えられるすべての計算が可能になり、また考えうるいかなる数字も書いて表現できるようになったという点が指摘できる。第二は、1、10、100と数字が並んだ場合、次に来る数字は1000だと容易に予想できるようになった点が上げられる。ゼロの導入で数の表記体系の全貌が目で見えるようになり、また明瞭になった。ローマ数字のI、X、Cや、V、L、Dなどで同じことを考えてみられたい。これらの並びの次の数字を想像できるだろうか。


(サンプリング)

  サンプリングはリスク・テイキングにおいても必要不可欠である。われわれは将来を予想するために常に現在と過去のサンプルを利用している。「平均すれば」というのは非常に馴染みのある表現だ。しかし平均をどれだけ信頼できるだろうか。判断のベースとなるサンプルがどれだけ全体を代表しているだろうか。一体、「標準」というのは何だろうか。統計学者は、足をオーブンに入れ、頭を冷蔵庫に突っ込んだ人を例にとって冗談を言う。この例に挙げられた人物は「平均すれば」至極快適なはずである。群盲と象の話も有名だ。なぜなら個々の盲人は巨大動物のほんの小さなサンプルしか手にしていないからだ。


(平均への回帰)

  平均への回帰により、危険を冒すことと予測を行うことに関するほぼすべての形態が動機づけられる。それが、「上がるものは必ず下がる」、「盛者必衰」、あるいは「一族の栄華も三代まで」などの格言の根底にある事実なのだ。ヨセフが、七年間の飢饉の後に七年間の豊作が来るとファラオに予言した時にも、このように定められた物事の連鎖を念頭においていた。あるいは、J.P.モルガンが、「市場に変動はつきものだ」と述べたのはまさにこのことを意味していた。また、いわゆる逆張りの投資家が敬意を払う信条でもある。ある銘柄が「過大評価」あるいは「過小評価」されていると彼らが言う場合には、不安や貪欲さによって大衆がその株価を、確実に戻るはずの本質的価値から引き離してしまっていることを意味する。それはまた、負けが込んだ後には勝ちが続くというギャンブラーの夢を刺激するものでもある。


(株式市場は過剰反応する)

  特定の株価が「上昇しすぎ」たり「下落しすぎ」るという証拠がある。1985年、経済学者のリチャード・タラー(Ritchard Thaler)と、ワーナー・デボント(Warner DeBondt)が、「株式市場は過剰反応するか」と題する論文を、アメリカ・ファイナンス学会の年次大会で発表した。株価の一方向への極端な動きが「平均への回帰」を引き起こし、引き続き逆方向への極端な動きが起こるかどうかを検証目的としながら、1926年1月から1982年12月にかけて1000銘柄以上の株式について3年ごとの収益率を分析した。彼らは、3年ごとの期間で、市場平均以上で上昇あるいは市場平均以下で下落した株を「勝者」、また市場平均以下で上昇あるいは市場平均以上で下落した株を「敗者」と分類した。彼らは続いて、各グループのその後3年間の平均パフォーマンスを計測した。
  この検証結果は明瞭だった。すなわち、「過去半世紀にわたって、敗者ポートフォリオは…、ポートフォリオ構築後の36ヵ月収益率に関して平均19.6%も市場を上回っている。他方、勝者ポートフォリオの収益(収益率生成)は市場を約5%下回っていた」。


(「平均への回帰」に依存)

  未来を予測するにあたって「平均への回帰」に依存することは、平均自体が流動的である場合には危険を伴う。ライヘンシュタインとドーセットの予測では、未来は過去と似たものになると仮定されるが、常にそうなるという自然法則があるわけではない。もし、地球温暖化が進行するなら、暑い年が何年も続いた後に、必ずしも寒い年が何年も続くとは限らない。ある人の症状が単なる神経症ではなく精神異常にまで進行した場合には、鬱状態は断続的というよりは永続的となるだろう。また、もし人類が環境を破壊し続けるならば、干ばつの後に洪水はやってこなくなる。


(オプション)

  直観ではなく数字を使ってオプションの価値を計ろうとした最初の努力は1900年のルイ・バシュリエに溯る。1950年代そして1960年代にも若干の人間がそれに着手しようとした。その中にはポール・サミュエルソンも含まれていた。
  パズルは思いがけない三人組によって1960年代後半についに解明された。彼らが共同研究を始めた時、その全員が30歳にもなっていなかった。フィッシャー・ブラック(Fisher Black)は、経済学やファイナンスの授業を履修したことのないハーバード大学で博士号を得た物理数学者だった。彼は科学理論研究があまりにも抽象的で好みに合わないことに気づき、ボストンにあるアーサー・D・リトル社という経営コンサルティング会社で働き始めた。マイロン・ショールズ(Myron Scholes)は彼の生家の出版業から逃れるため、シカゴ大学の経営大学院でファイナンスの博士号を取得していた。彼はMITの教授会に迎えられたばかりだった。「スウィフトの島巡りの動きのない%ョき」という最初の論文を発表したロバート・C・マートン(Robert C. Merton)は、コロンビア大学で数理工学の学士号を取得し、サミュエルソンの助手としてMITで経済学を教えていた。そして博士号は未だ取得していなかった。


(デリバティブ取引の惨事)

  有名企業でのデリバティブ取引の惨事は、企業経営者がボラティリティを制限するのではなく、ボラティリティへ賭ける部分を増やしていたという単純な理由に由来する。彼らは、企業の財務部門を利益センターに変えようとしていた。彼らは、可能性の低い出来事は起こりえないと考えていた。ある一定の損失とギャンブルとの間の選択に直面すると、ギャンブルの方を選んだ。彼らは、最も基本的な投資理論の原則を無視している。巨大な損失を被るリスクなしに、巨大な利益は期待できない。



※ ( )内タイトルは勝手につけました。

 

 
 
 
鉄 太 郎 の ナ ル ホ ド と 納 得
 


  統計とは、過去の現象を説明するもので将来を予測するものではない。
  但し、母集団の性質が変化しないという前提をつけると統計は将来の予測値となる。
  大衆という投資家を母集団とする株式市場は、チュリップ相場の昔から、現代のイン
  ターネット相場まで、ある性質を持ち続けており、統計値の中には、将来を予測できる
  ものもある。